2017年2月25日土曜日

無名の殉教者 - 第1部が脱出編なのか






 弾圧の追っ手を逃れて、約束の地・津軽を目指す逃避行を描こうと思った。
 モチーフはもちろん、旧約聖書にある出エジプト記である。

 全国規模で切り丹が弾圧される中、切支丹の領主が治める土地が北方辺境の津軽にある!
 そこに行けば、土地や家を与えられ信仰が約束されている・・・
 その思いだけが、切り丹たちを津軽へと、駆り立てた。

 追っ手に追われ海岸線に追い詰められた時、突然の地震で引き波が発生し、遠浅の海を歩いて渡ることができた。すると間もなく、返しの波が追っ手に襲いかかり、飲み込まれてしまった。
 また、山中で方向を見失うと、一陣の風と共に蚊柱が現れ、逃避行する切支丹一行を先導した。

 モーセに相当するのが、古参の信徒である老女であり、岩木山が見えるところまでたどり着いて、息絶えてしまう。
 そして、ヨシュアに相当するは、老人たちの面倒を良く見ていた青年である。

 津軽に到着した切支丹たちは、堀越城(後には弘前城)に出頭し、藩と盟約を結ぶことで定住が許された。
 それは、切支丹信徒を増やさないことであった。信仰を認められるのは、現世代の一代限りとし、津軽で生まれた世代を切支丹にしてはならなかった。
 切支丹たちは、その制約もやがて解除されることを信じ、盟約を結び密やかに信仰を続ける覚悟をした。

 さて、切支丹たちに与えられた土地は、岩木川の左岸、地味は濃いが、荒れ放題で茫漠としていた。
 まず、切支丹たちは流木を集め、雨露をしのぐ小屋を建てた。井戸はなく、川の水を飲んだ。
 初めは、弘前城の築城に従事し、幾重にも分流する岩木川の流れを整えた。これは集落を川から守る意味もあった。
 やがて、藩からお触れが出た。岩木川の氾濫を防いで新たに出来た土地は、農地として所有できると・・・

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