第1部は逃避行をして津軽にたどり着き、定住するまで描く。
そして、第1部の終わりに既に定住している避難民との衝突、和解の物語が展開する。
この流れが、第2部に引き継がれる。
先来の定住者たちは、関が原の合戦で敗れた西軍の武将一族だった。身分の高いものは、津軽家家臣となっていたが、陪臣以下は川岸の小高い丘に集落を形成していた。
到来した切支丹は、川岸の低い土地に集落を作ったが、すぐに川の増水で押し流された。切り丹たちも、高台に移転したかった。だが、ぎりぎりのところで軒を寄せるように暮らした。
やがて未曾有の大洪水が起こった。切支丹たちの集落は跡形も無く流された。切支丹たちは、先来の定住者がいる集落に身を寄せていたが、川の水は更に水位をあげ、その集落にも肉薄した。
「竹は無いか?」
「ここは、北方辺境の地ゆえ、孟宗竹は生えぬ!」
「根曲竹ならある!」
「それもいい。その竹で、籠を編むのだ!」
「籠を・・・」
「蛇籠だ。それに砕石を詰めて、川岸を固めるのだ!」
一同の者、知恵を出し合い、力を合わせて集落を守った。そして、三日目の朝、雨は止んだ。川は人々が作った蛇籠を越えることはなかった。やがて、見る見るうちに川の水位は下がっていった。
従事した一同は疲れ果てていた。眩い朝日が閃光のように差し込むと、彼らの汗が湯気になって立ち登っていた。背中いっぱいに朝日を浴びながらよろよろと立ち上がる若者がいた。彼は指差して言った。
「見よ!」
「おお!」
岩木山に大きな虹がかかっていたのだった。従事した一同銘々それぞれの宗旨で感謝の祈りを捧げた。山に向かって土下座する者、虹に向かい十字を切る者、朝日に手を合わせる者がいた。そして、お互いの労をねぎらった。
この一件以来反目していた先来の定住者たちと、新参の切支丹との間でお互いに和解し、協力していく約束がとり交わされた。人々が一致して協力しなければ、自然の猛威はいともたやすく人々の生活を奪うことをそれぞれに知った。それは、お互いに反目すること自体が恵まれた状況で、この土地ではそれすら与えられないほどに貧しいことに気づいたからであった。
0 件のコメント:
コメントを投稿