切支丹の村を前にして検地役人の会話から見えてくる村の様子。
- 佐々木
- あの鍬を降るっている若い男女の素性が分かるか?
- 工 藤
- 兄に妹か?
- 佐々木
- なぜそう思う?
- 工 藤
- 若く見えるが、夫婦なら赤子でも背負うなり、近くに置くなりしているものだ。それが、いない。
- 佐々木
- あれは、子供が生まれて間もない夫婦だ。
- 工 藤
- 赤子は、親元にでも預かってもらっているのか?
- 佐々木
- 二人とも、両親を亡くしている。
- 工 藤
- では、誰が赤子の面倒を見ている?
- 佐々木
- 一人暮らしの婆さんが、面倒を見にきている。
- 工 藤
- 身内の者か?
- 佐々木
- いや、ここに村ができてからの者だ。
- 工 藤
- 頼って、いいものか?
- 佐々木
- あの夫婦は、信頼しているようだ。
- 工 藤
- 他者とは、信用して良いものなのか?
- 佐々木
- 切支丹は、信用に足る何かを知っているようだ。
- 工 藤
- それは何だ?
- 佐々木
- 御大切(ごたいせつ)とか言うが、何のことか、分からぬ。
- 工 藤
- お前でも分からぬものあるとはな。
また、若い夫婦には、開けた農地が割り当てられ、多くの村人は、更に荒れた土地の開墾に従事していた。
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