2017年3月4日土曜日

無名の殉教者 - 全ては『夢』から始まった。



 ジャス君が家出していた頃、確か2月の厳冬時期だった。
 夕方暗くなるまで岩木川の土手でソリすべりで遊んだ夜に、奇妙な夢を見た。
 その日の夕方、薄暗くなってから帰宅した情景と同じ夢だった。
 ただ違うのは、家の前に水を張った大きな木桶があった。その上に『何か』があって、通りすがりの人が木の柄杓でその水をすくって、その『何か』に向かって掛けていた。
 薄暗くて見えなかった。私は水掛地蔵か何かと思ったけど、木桶の上に地蔵なのか?
 と、不審に思いながら近づくと、『何か』は磔になっている人だった。既に死んでいるのか、ぴくりとも動かない。その人に向かって、凍りつくほど寒い中、水を掛けていた。
 私は小走りに玄関に入ろうと、磔柱の前を通り抜けようとすると、急に身体が持ち上がった。あばれても、そのまま上に上がっていく。眼下に磔になってうなだれた姿が見えた。髷を結っていて、水に濡れた着物を着ていた。
 すると次の瞬間、どすんと地面に落ちた。私は、わずかな時間だが、気絶していた。気がつき、顔を上げると、まだ木桶と磔柱の前だった。スポットライトが当たっているように、その人を照らし、顔は逆光で見えなかった。
 そこで、目が覚めた。実にリアルで不思議な夢だった。今にして思えば、あの姿は十字架上のキリストに酷似していたよーな・・・

 ちなみに、昔の弘前に切支丹がいて、現在の聖母被昇天修道院がある辺りが処刑場だったことを知るのは、中学になってからなので、この頃は、まったく知らなかった。

 さうさう、最近気がついたのだけど、あのソリ遊びをしていた場所が、江戸時代に作られた堰が元になった人工河川だった。

土淵堰
 http://midori.inakajin.or.jp/sosui_old/aomori/a/487/index.html

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